新型コロナウイルス感染症に罹患した

流行にはうとい僕だが、先日ついに流行病の新型コロナウィルスに罹患してしまった。

僕にしては珍しく流行の最先端を歩いているぜ、と思ったが、よく考えるとコロナが騒がれ出した2020年1月からもう3年も経つわけで、別に最先端ではない。むしろ、また流行に乗り遅れている気すらする。

 

今回の記事は、「コロナが辛かった」という8文字で表せる情報を、引き伸ばして2500文字に膨らませた、そんな日記です。

 

 

発症初日

普通の風邪は、引き始めから徐々に症状が悪化する。「鼻水が出て、咳も出て、頭痛までしてきて、最後に発熱する」という一連の流れが、数日~数週間かけてゆっくりと進行する。

コロナはまずその点で普通の風邪と違った。「なんか身体がダルいな」と感じてから30分で熱が40℃まで上がった。

鼻水も咳も頭痛もないのに、身体は鉛のように重くて激しい悪寒がする。

あまりに急激な体調の悪化に、なにか毒でも飲んだのではないかと考えるほどだった。夜ご飯に食べた山菜のおひたしの中に、人間が食べてはいけない毒草が紛れ込んでいた可能性を疑った。

このまま死ぬのかなとすら思った。

 

症状の悪化は30分で止まり、幸いなことに死にはしなかった。

ところが、暖房の温度をいくら上げても体の芯が寒く、震えが止まらない。暖房を30度の強風に設定し、服を着られるだけ着こみ、布団にくるまっているのに、ガタガタと震える。身体の表面は熱いのに、芯はぜんぜん温まらない。

このまま死ぬのかな、と再び思いながら布団にくるまっていると、急に強烈な眠気に襲われて眠りについた。念のため書いておくと、死んだわけではない。

 

発症初日は、その後もずっと眠かった。とにかく眠かった。たまにトイレや喉の乾き、空腹で目覚めるものの、目覚めてから5分ほどで強い睡魔に襲われ、倒れるように再び寝てしまう。

しかし、病にうなされながらでは熟睡することもできず、1時間ほどして目が覚める。

そうして、1時間眠って10分起きるサイクルを何度も繰り返した。

 

症状が出てからの24時間中、20時間以上は眠っていたと思う。

こんなに眠るなんて、まるでコアラみたいだ。ご存じの通り、コアラの主食はユーカリだが、ユーカリには毒がある。コアラはユーカリの毒を消化するために多くのエネルギーを使い、活動のためのエネルギーを確保できないので、1日のうち18~20時間は眠っている。

それをふまえると、僕の症状がコロナであると断定するのは早計な気もする。夜ご飯の山菜のおひたしにユーカリが混入しており、その中毒症状が出ているだけな可能性もある。

 

 

発症2日目

熱は40℃から少し下がって39.0℃。相変わらず高熱だが、初日ほどの悪寒はない。

抗原検査キットで検査をすると、陽性判定が出た。ユーカリ中毒ではなく、やっぱりコロナに罹患していた。

 

食欲は無いが栄養を取らないと治らないので、冷蔵庫からウィダーを取り出す。しかし手に力が入らず、キャップがなかなか開けられない。いつもならすんなり開くはずのキャップが、全然回らない。歯で開けようと思ったが、歯にも力が入らない。

5分ほど格闘するもキャップは回らず、疲れてしまったので水道水だけ飲んでベッドに戻った。

横になってボケッとしていると、なんだか急に虚しくなって涙が出そうになった。栄養を取らねばならないのに、ウィダーのキャップすら開けられない。その事実を意識すればするほど、自分がみじめに思えて悲しくなる。

 

今の衰弱は一過性の病気によるもので、数日後には治ることが約束されているので良いが、老衰でウィダーのキャップを開けられなくなった時、その絶望から立ち直るのは難しいと思う。

 

 

発症3日目

熱は38.0℃まで下がり、悪寒やダルさは和らいだが、3日目にして味覚に変化が生じた。

味覚の変化はコロナに罹患した時から楽しみにしていたので、少し嬉しい。

 

「コロナで味覚が消えた」という人をたくさん見ていたので、コロナによる味覚障害は味覚が消える事だと思っていたが、僕の場合は逆に味覚が過敏になった。多くの料理はしょっぱすぎて食べられたものではなく、甘いお菓子は角砂糖をそのまま食べているくらいに甘い。

調べると、コロナによる味覚障害は、味が消えるだけでなく、逆に敏感になったり、甘味を苦味のように感じたりなど、いろいろな症状例があるらしい。

 

手に力が入るようになったのでウィダーを飲むと、マスカット味なのに蜂蜜のように甘く、飲み切るのに苦労した。

病気を治すには栄養の摂取が必要だと分かっているが、口に入れる食べ物がすべてマズくて何も食べたくない。

人の味覚を変化させて栄養摂取を妨げるのは、ウィルスとしてかなり強い能力だと思う。僕がウィルスを開発するとしたら、「栄養摂取を阻害するために頻繁に嘔吐させる」とかは思いつくだろうが、「味覚を変えて食事をさせないようにする」なんて思いつかないだろう。敵ながらこの戦法は天晴れだ。

 

 

発症4日目

熱は38.0℃のまま変わらないが、ひどい咳と痰の症状が出始めた。

5秒に1回咳き込み、咳止めを飲んでいないとまともに生活ができない。咳止めを飲むとある程度和らぐが、それでも咳が出るには出るので、眠ることもできない。

痰も際限なく分泌され、5分に1回のペースでティッシュに吐き出しながら生活した。人生で初めて「家に痰壺を置きたい」と思った。

 

 

発症5日目

熱は平熱の36.0℃まで下がった。咳は変わらずひどく、咳止めを飲んでいないと何もできない。痰も相変わらず絡んでいるが、痰壺の購入を検討するほどではなくなった。

 

 

発症6日目

熱が上がる事もなく、ダルさや悪寒も感じない。咳はまだ出るが、咳止めを飲まなくても生活できる。痰はほとんど絡まなくなった。

 

 

以上、コロナに罹患してから今日までの日記でした。要約すると「辛かった」の4文字になります。

コロナは髪が抜ける後遺症があるとかないとか聞くので怖い。抜けるならスネ毛とかにしてほしい。